だけど私自身、第九のティンパニは初めてだから以前とどこがどう違ってるのか全然知らないんですよね。そして変更点があまりに多いためか、まとめ資料がネットで簡単には見付からない(抜粋ならあるんだけどね)。
てことで、ベーレンのスコアも買って家にある全音のスコアとか◇IMSLPにあるスコアやパート譜を見ながら新旧の比較をしてみました。
ただしティンパニのみ。一応、該当部分については全体的に比べてますけどね。抜けとかあると思うのでとりあえずは暫定版としておきます。
本来こういうのは自筆譜から追っていってあーだこーだやった方が音楽の本質に迫れると思うのですが、私には根気とか頭とかいろいろ足りないので、従来の譜面との差異のみを列挙する程度にとどめたいと思います(いや、めんどくさいとかそんな理由じゃ…まさかそんな…ねぇ……^^;)。
そういうのが気になる人は検索してみるとすぐに音大生の論文pdfが見付かりますのでそちらでどうぞ。
…さて、では第1楽章から。
■17小節目
しょっぱなのフレーズから違います。
下がったAの音のtrをどこまで伸ばすか。
旧版は2拍目で切りますが、新版は1拍と8分の7みっちり伸ばすように変更されてます。

これで、この場所の音の長さがオケで統一されることになりますね。
あと、これまでは2拍目でTimpがドンと決めて一区切りのような印象もありましたが、音が伸びることで印象も変わります。それに伴い管弦もサボれないかなと。特に管はシビアになるかな(笑)
■19・20小節目
上記のほぼ続き。オケが「ファミレ|ラ ソ ミ ラ」とtuttiでやっている部分ですね。
スタッカートの付き方が変わっています。

オケ全体もこのフレーズはスタッカート→スタッカーティシモに変更されています。
Timp(とTrp)の最初の3音にはそれが付いていませんが、これは何ででしょね?
スタッカーティシモって多少はアクセントっぽくなるし、この3音は音が短いから根音が目立つとフレーズが聞こえにくくなるってこと?
…自信度10%(^^;)
■31〜33小節目

3音がsf→fに変更されています。同様の変更はTrpにも(Trpは32・33小節目の2音だけど)。
ベートーヴェンはfをsf代わりにも使うのでここだけだと違いは無いようにも思いましたが、スコアと変更パートも考慮すると、音量はf<sfで、前述の2パートにはあまり目立って欲しくないということなのかなと解釈しました。
■59〜61小節目

sfの数及びスタッカートの有無が違っています(旧版でもスタッカートがあるのが1小節だけのものもあり)。
ここは後続のsfが無いことで音の重みと流れが違ってきますね。sfがあると1小節ごとのブロックが並ぶ感じになりますが、無いとその分音楽がスムーズに流れます(弦には付いてるんですが、Timpのインパクトに比べれば落ちるかと)。
ここはsfが無い方がこの直後62小節目で勢いがついていいかもしれませんね。
■64〜67小節目
上記の直後です。

最初の2小節間はマルカート→スタッカーティシモに、続く2小節間はsf→fに変更されています。いずれも音が軽くなる方向と解釈しています。
また、最初の2小節間はオケ全体にスタッカーティシモが付いており、高音パートにはマルカートの指示も残ったままです。
従来の音楽よりも中低音は控えめに、ということでしょうかね。
■95小節目

恒例のsf→f。もちろんTrpも。
そしてこの場所、低弦は強弱記号無し→fへ変更となっています。
つまり、従来より楔を打つ楽器は抑えてチェロバスをくれってことになるかと。
■102、106小節目

2回ともスタッカートから、1回目スタッカーティシモ&2回目何もなしという変更。そしてこれはオケ全体でも同様です。
従来は同じ音型で演奏されていたのが、1回目と2回目とで表現を変えろということになりました。2回目は短く切らないわけですから、1回目よりは堂々とした響きになりますかね。
■138小節目

1回目の打ち込みでの音量がff→fに。これは同じ音形の管楽器も同様。
この場所、HrとFgはこの変更により1回目はf、2回目以降はffになるのね。
■149小節目
新版って大概はTimpが大人しくなる方向に変更されているのですが、ここは違いますね。

スタッカーティシモが追加されて刺激が強めになっています。
この場所、他パートはスラーのフレーズなのでこの変更はTimpとTrpのみ。
■300小節目
この楽章いちばんの盛り上がりへの階段の段数が増えました。

8部音符×4が16分音符×8に。
どっちのパターンもそれぞれ味があって好きです。
■327〜335小節目
2小節ごとのあたまに付いていたsfがfに。譜面は省略します。
ここ、この一連のフレーズの最後の>(decresc)だけはsfのままなんですよね。
きっと自筆譜がそうなってるんでしょうけど、そうなるとfとの区別をつけなきゃならないってことかな?
■349〜354小節目

新版では弦楽器と同様の<>が入っています。
まぁ、書いてなくてもやってしまうとは思うのですが、ちゃんと指示が入っていると嬉しいですね。
■362小節目

sf2発が無くなりました。
ええー?ここはsf入れたいよねぇ。寂しい(´・ω・`)
でも同様のパターンの456小節目、504小節目では何も付いてないからその延長だと思えばいいかな?(その2箇所はオケ全体でsf無しなんだけどね)
■369〜370小節目
どちらの小節も、前出の102小節目と同様に変更(スタッカート3発→スタッカーティシモ4発)。
■373小節目
前出の106小節目と同様に変更(スタッカート3発→スタッカート削除)。
■407〜413小節目

前出の138小節目と似たような変更。
例によって例のごとく、TimpとTrp以外はffのまま。
■418〜419小節目
fからffに上がるタイミングが変わります。

でもここ、例によっての2パート以外は旧版のタイミングのままなんですよね。
■420〜426小節目

ここも全体的にあっさり風味に。Trpも一緒。他パートにはsfやfが残ったままなのも一緒。
■482〜484小節目

スタッカーティシモが追加。
ここはあまりズンズンと音に重みを加えてはいけないということですね。
■527〜531小節目

piu fの位置が変わっているのと、その後にcrescの点線が継続しているのが変更点。
ここはcrescが続いていた方が雰囲気が出ますね。
■531〜539小節目
上の箇所から引き続いて。

sfの位置が変わっているのと、539小節目にあったsempre ffが無くなっていますね。
この2小節目にあるsfはTimpのみ!ガツンとやっちゃっていいのかなぁ。何か怖い(^^;)
sempre ffはTimpと金管が外されてますね。メロディラインを聴かせたいということなのでしょう。
■545小節目〜最後

最後から3小節目のffと2小節目のスタッカートが無くなっています。
あと、最後から2小節目にff。
ffが無くなっているのは、やはり弦と木管の動きを重視したいということなのかな。
で、打ち込み部隊としては最後の2音だけ頑張ればよいと。
それから、新版で最後から2小節目の2拍目裏にスタッカーティシモが付いていないのってTimpだけなのね。ついにTrpにも裏切られたか…(笑)
大体において、「Timpは目立つな(大学オケ時代のスラングだと「Timpは死んで」)」という方向に修正されてますね。
ベートーヴェンの音楽をしつこく感じさせているのは作曲者だけのせいじゃなく出版社も関係しているんじゃないだろうかと思わなくもありません(^^;)
しっかし修正箇所多いね。
続きは別エントリーで。
続きです。
◇「第九」新旧版の違いをティンパニだけ書き出す(第2・3楽章)[暫定版]
◇「第九」新旧版の違いをティンパニだけ書き出す(第4楽章)[暫定版]